2009年11月19日木曜日

学会とは

生産管理学会から学会誌最新号(Vol.16, No.1)が送られてきた。
巻頭言を読んで目が点になった。副会長ともあろう著名な学者(もちろん教員)が、「会員みんなの学会誌の向上にむけて」と題して、論文の書き方、投稿の課題について述べている。
もちろん、巻頭言になにを書くかは執筆者の自由であるけれども、巻頭言は、いわば、学会誌のキーノートであり、副会長は、学会のキーパーソンであるはずだ。したがって、今、生産管理、いいかえると日本のモノ作りが直面している非常な危機に関して、重要なメッセージが大なり小なり述べられてしかるべきではないだろうか。すくなくとも、それを読者は期待しているはずである。
しかし、この著者は、このことに全く関心を示すことなく、書き方指導をしている。学会誌、いや学会にとって、いま、もっともだいじなことは論文の質をあげることであるかのように。
そんなことよりも真剣に、それこそ英知をあつめて、日本のものづくりをどうすべきかが議論されなければ、学者の存在価値さえ無になってしまうという自覚が全くないのだ。
職業人としての学者は、論文を書いて業績を増やし、学会内部で認められることが目的なのだと勘違いしている。そんな業績はゴミ箱に捨てる価値さえない。
積極果敢に、この問題にコミットする姿勢なく、単なるサロンをきどっている学会になんの魅力どころか、存在価値さえもない。

2009年10月21日水曜日

ポートフォリオマネジメントの課題、総枠はどう判断するのか

ポートフォリオマネジメントの重要な役割が費用配分問題にあることはたしかだが、あわせてIT投資の総額をいくらにすべきか、は、さらに、重要なテーマである。

ITへの支出を投資と考えれば、それは資金調達可能性や利益の配分の観点から検討できるが、コストと考えれば売上高原価率を参照すべきであろう。しかし、単なる間接経費とみられているならば販売費および一般管理費内の配分比率として設定されるてしまうであろう。

総額はいくらが妥当かを検討する前に、ポートフォリオマネジメントとして、各カテゴリーが経営上、どう位置づけられているか、という基本的な問題についても合意形成を図る必要があるだろう。

2009年7月12日日曜日

不況下のIT投資マネジメント

IT投資マネジメントが、ITの経営への貢献や効果の最大化を目指すものであるならば、昨年来の金融危機に発するIT投資の急減速という事態をどのように捉えるべきだろうか。新しい事態を考慮してIT投資マネジメントを進化させるべきではないか。
企業において、今、生じている状況を確認してみよう。現在、ほとんどの企業において大幅なIT費用削減が行われている。経済的採算性の厳密な追究よりも、支出自体を抑えようとする経営的意図が如実である。したがって、従来的な意味でのIT投資マネジメントは役に立たないかのように、IT費用/売上高比率などの単純な方法が用いられている。
最近のASP(Application Service Provider)やSaaS(Software as a Service)、さらにクラウドコンピューティングの進展は、従来の初期投資回収型モデルから、IT費用を変動コストとしてみる変動費型モデルへの転換を促している。しかし、固定的な費用を削減することが最優先なのであろうか、まだ、成果があがっていない。
多くのCIOは、安易な削減が後々まで負債として企業に悪影響をもたらしかねないことを懸念している。その一方で、ERPなどの基幹システムの導入や更新は企業のグローバル化のなかで避けることはできないとして、戦略的な投資を続けている企業は、ROIよりも限られた資源のなかでの投資優先順位づけを行うポートフォリオ手法を重視している。
業績拡大期においては、IT投資はそれほど重要ではなかったためか、経営が直接関与することなく現場任せで十分だったかもしれない。この不況期こそITガバナンスを根付かせる好機かもしれない。ITのガバナンスの本来の目的は、統合化、共通化による全体最適(費用対効果最大化)にある。この機に、①従来のシステムを停止も含めてゼロベースで見直す、②関係会社も含めてIT支出を本社管理下に置く、③IT部門や要員を一箇所に集め、関係会社の裁量でのシステム開発を最小限にする、④削減した資金を有効活用し、グローバル業務の統合やとITの統合を行う、などと見直しを行った企業もある。
業務変革を伴う情報システム化には、人の削減が伴いがちなため断固反対という意見も噴出する。とりわけ大企業では、機能組織が複雑にからみあい、ITによる業務固定化のため変革が困難になっている場合も多い。
IT投資の増減が、経営管理層の生き残りのパワーゲーム、政治的な行動に巻きこまれているケースもある。利益を出せと迫ることで案件を過小評価し消滅させようとする恣意的な行動も見られる。
ROIを算定することは、情報システム部門にとって経営者に対するアカウンタビリティとしても重要であるが、政治的な議論になればなるほど、ROIは無視されやすい。しかし、ROI算定は、経営上の意思決定のための情報提供というよりも、IT投資の計画段階で内容を突き詰めるために、お互いの当面のメリットを確認し、長期展望も共有する合意形成のために、あえて算定することの重要性を強調し続けなければならない。
計画段階で経営課題としてきちんと議論しておかなければ、後から経営の視点での投資評価や、優先順位付けが困難になり、経営戦略を支援することはできなくなる。政治的なゲームによって意思決定された情報システム化が企業に貢献することはありえないことは当然である。

2009年4月16日木曜日

南波幸雄さんの 「 企業情報システムアーキテクチャ」を読んで

研究メンバーの南波さんの本(右の本棚に掲載)が出版された。まずは、お祝いを述べたい。この本はアーキテクチャーの本ではあるが、その前に、企業情報システムと記されている点を注意したい。
もとより経営情報学は経営学と情報学との補完的な関係あるいは2つの領域の融合を目指しているわけではあるが、しかし、相変わらず経営学と情報学を並列的に、あるいはどちらかの視点が主で、もう一方が従である議論も少なくない。この本を読めばすぐわかるが、企業経営のなかでのアーキテクチャーの位置を確認し、それを構築している点が、大きな特徴であり、まさしく経営情報学とは何かを示唆している。
ところで、この本で私たちにとって大変重要な指摘が書かれている。
私たちの本「IT投資マネジメントの発展」で強調したレディネスが、きちんと取り扱
われていることである。
南波さんによれば、経営戦略との情報システムの関係の議論は、ながらくITは経営の道具、という俗説的アライメント論に振り回されてきた。つまり経営戦略をきめその道具としてIT、情報システムが構築されるべきだという議論が主流であった。
しかし、南波さんが強調しているのは、逆の矢印もあるはずだ、つまり、ITや情報システムが経営戦略に影響を与える、あるいは経営戦略に先立って情報システム、とりわけ基盤的、基幹的情報システムは構築されねばならないという点である。
この議論は、本のなかでも述べられているように、私たちの本、とりわけ、小酒井さんの8章「インタンジブルズの管理」で示されたレディネスの概念を、情報システム学の視点から、確認したことと読める。
経営戦略と情報システムとが双方向の関係にあるという点、そこにおけるレディネス(備える)を高めるためにこそアーキテクチャーの役割があるのだと指摘した点で、この本は、歴史的な本といえる。つまり経営学と情報システム学が有機的に融合できることを示しているからである。
南波さんから
「ビジネスと情報システムとの関係が、driveとenableの双方向の関係を持っていることより、enableに相当するものは何なのかと考えているときに、レディネスが頭に浮かびました」
とコメントをいただいた。
まさしく、経営情報学の観点からの大きな成果である。

2009年4月10日金曜日

上流下流こだわり論

「ものづくり立国」を標榜する我国では、当然のことではあろうが、「ものづくり」が上流で、「もの売り」が下流と言われている。「もの」を売る前に、「づくり」がある以上それを上流と呼ぶのは当然といえばそれまでのことだが、そのことが「高機能なもの」を作りさえすればいいという信仰になってはいないだろうか。いまさら、言うまでもないことではあるが、SeedとNeedは一方通行ではなく、双方向である。
また、「ものづくり」を利益に結びつけるためには、価値創造と価値獲得の2つの要因が必要である。そして、価値獲得で重要なのは差別化・独自性で、補完的資源としては、販売チャネルとブランドの2つがなければ、価値獲得は難しいと言われている(延岡健太郎、(2006))。
さらに、古くはChandler, Jr.(1977)が、厳密な言い方ではないが、「もの売り」を前方といい、「ものづくり」を後方といっている。また、新しいところではTeboul(2006)が販売・サービスを表舞台といい、サプライチェーンを裏舞台といっている。何も、海外の考え方だからといって担ぐ心算はないが、「ものづくり上流論」には、「ガラパゴス製品」をついつい作ってしまう危うさを感じる。
一方、ソフトウェアの世界では、「上流」、「超上流」という言葉が俄然注目を集めている。このこと自体は悪いことではないが、この言葉を聞くと、新しい工場建設に携わったのであれば、工場計画もできるだろうという昔話を思い出す。計画と建設は全く異なる知識領域あるいは文化を持っていると思う。したがって、「上流」という言葉は「下流から遡れる」という印象を与えかねないという危うさを感じる。
エンジニアリング業界では、「上流」に相当する業務をFEED(Front End Eng-
ineering)と呼んでいる。エンジニアリング業界に身を置いたことのある筆者としては、この言葉の方に親しみを感じる。ハードウェア・エンジニアリングとソフトウェア・エンジニアリングとを同一視する心算はないが。
もしかすると、「上流・下流」と「前方・後方」という言葉遣いは、「縦社会」と「横社会」の意識の差からくるものであろうか、あるいは単なる「事大主義」であろうか。

2009年4月8日水曜日

アーキテクチャ論批判

アーキテクチャは、zachmanのフレームワークにもとづく「エンタープライズアーキテクチャ」が創始とされる。また、As-Isモデル、To-BeモデルあるいはNextモデルなどもかつて熱く議論された。さらに、省庁もその普及を主導していた。ある企業は「情報システムの最適化」をするためのものと位置付けていた。システム論として考えれば、「最適化」とは、システムモデル、制約条件あるいは目的関数について明確な定義が不可欠であるが、明確になっていたとは言えないかった。今から考えると、当時のアーキテクチャの議論では、まだ「ビジネス」に関する視点が欠けていたのではなかろうか。
一方、藤本隆宏・武石徹・青島矢一編著『ビジネス・アーキテクチャ』有斐閣 2001が著名であるが、このビジネスアーキテクチャ論は、製品のアーキテクチャを議論しており、それが産業と生産プロセスにどのように影響するかが議論の中心であったため、企業のビジネスモデルを対象としているとは言い難い。ビジネスアーキテクチャには、プロダクトアーキテクチャ論を超えた検討が必要ではないか。そして情報システムの位置づけも必要なのではないだろうか。
いずれにしても、単独企業のみを対象にするのではなく、連結子会社あるいは提携会社と企業グループ、海外事業、海外生産、研究開発拠点などを反映したアーキテクチャの議論が必要なのはいうまでもない。
また、ビジネスアーキテクチャにリンクした情報システムの議論が不可欠である。情報システムアーキテクチャがビジネスアーキテクチャ、さらに組織アーキテクチャと連携しながら議論されなければならないだろう。情報システムをビジネスシステムの一部と考えるか、相補的な関係を重視するかは議論があるが、情報システム構築のためのシステムアーキテクチャ論に潰えてしまうのは、避けるべきであろうことはいうまでもない。

2009年4月7日火曜日

参考文献一覧

適宜更新します。
1.情報化戦略の進化とコスト・マネジメント (日本管理会計学会企業調査研究プロ ジェクトシリーズ)  
溝口 周二 (著) 価格:¥ 3,675 
出版社: 日本管理会計学会 (2008/02) 発売日: 2008/02  
2.IT投資とコストマネジメント 
 東山 尚 (著), 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS) (監修) 価格:¥ 3,990 
出版社: エヌティティ出版 (2008/11/17) 発売日: 2008/11/17 

2009年4月5日日曜日

PDCAサイクル

マネジメントにとってPDCAサイクルを回すことは必須であるはずですが、それが設備投資であれ、情報投資であれ、あるいは研究開発費であれ、実際にはそれらの経済的事後評価は行われていないようです。
それは、投資経済性評価指標にも現れており、事前評価については、古くは回収期間にはじまり、最近は正味現在価値、内部利益率/DCF利益率、あるいはリアルオプション価値などが実際に活用されていますが、正味現在価値費比率(=正味現在価値/投資現在価値)というような正味現在価値に対応する事後評価指標(勿論、事前評価にも使えますが)が話題になることはありません。
しかし、事後評価の実施にあたっては、いくつかの問題があります。それは、まず、マクロな経済環境の変化というような外的要因によって、事前評価時点で設定した評価指標や数値が変わってしまうことが想定されます。好況期は売上高であったかもしれませんが、今のような不況期は人件費が重要な指標になってくるはずです。
企業業績に関して、有価証券報告書には、たとえば経常利益などの総体的、集約的評価が記載されているだけです。少なくとも正味現在価値に換算した費用は計算できるはずです。さらに、この総体的な意味でも正味現在価値の費用を、個別の投資、すなわち設備、情報あるいは研究開発費に分配することによって、事後評価としての情報投資利益率も算出できるはずです。
さらに、このデータを蓄積すれば、たとえばリアルオプションの算定に必須なボラティリティ(価値の変動性)のデータも得られることになります。
まさしく、事後評価を可能にする情報がもっと開示されるべきでしょう。

2009年4月4日土曜日

「IT投資マネジメント」PBLコースモジュール

本年度の大学院の授業でIT投資マネジメントをテーマに授業を行う予定です。
PBL(Prohect-Based Learning)の手法を用いて、ケーススタディ、ワークショップスタイルのコースを作成、実施します。
コースモジュールについて、少しづつ作成し、また実施後の状況をここに投稿しますので、ご参照、また、ご意見などお聞かせください。
作成は、以下のblogで公開します。ご参照ください。


フェーズ1.オリエンテーション
(1)IT投資マネジメントの基本
(2)チーム組織化、4名/チーム
(3)ケース紹介
企業名:ユニーク社、業種アパレル(SPA:製造企画販売)、本社は岐阜県
売上高:120億、社員数:250名(非正規社員は1000名)、資本金:2億円
組織:百貨店事業部、ブランド別事業部、生産事業部、事業開発部、管理本部
工場は大阪と中国
想定企業

フェーズ2.情報システム化計画立案
(1)情報シシステム化方針
(2)資源の定義
(3)効果項目の識別
(4)効果算定

フェーズ3.ROI算定、投資採算性評価
(1)年次別費用、効果ワークシート作成
(2)回収期間法
(3)NPV算定
(4)ROI算定

フェーズ4.アラインメント-経営戦略との整合性
(1)経営理念
美しいファッション商品の提供
働きがいのあるチームワーク
創意工夫と挑戦
高能率、高収益、高賃金
(2)SWOT
(3)戦略目標の確認

フェーズ5.戦略マップ
(1)戦略目標の落とし込み
(2)実施項目の定義
(3)マップ作成

フェーズ6.統合情報システム化計画立案
(1)アーキテクチャー
(2)統合情報システム立案
(3)組織資本、人的資本、情報資本の整備(レディネス)計画

フェーズ7.プレゼンテーション、報告書

2009年4月3日金曜日

アジャイル開発とIT投資マネジメント

情報システムは大規模化し長期化している。初期投資は増加し、本番稼働しなければ効果は得られない。つまり、支払と利益取得のタイムラグはますます拡大する一方である。アジャイル開発では、効果が見える単位にプロジェクトを分割し小ロットで開発することを基本とする。そうすることによって、確実に支払と効果発生のタイムラグは短くなる。最初に仕様をすべて決めきるのではなく、環境の変化に機敏に対応できるよう、必要なソフトは必要な時に開発すればよいとし、ムダなソフト開発をできる限り排除することで、不要な発生を抑えることができる。価値に応じた負担と最小の経営リスクでの情報システム化を実現するための方策がアジャイル開発である。

情報システム開発に際してITベンダーとこんな会話をしたことはないだろうか。「何をしたいのか、要求仕様を明確にしてください」、「でも、ITで何ができるかよくわからないから、何をしたいかがよくわからない」。さらに、「今度、販売チャネルの仕組みを変えたいのだけれど変更できるか」、「もう開発が進んでしまったので変更でできません。変えるのなら追加料金が発生します」。経営者が聞いたら怒るかもしれないが、現実によく起こる話である。

この原因は、初期投資回収型モデルを使っているからだ。まとめてつくってゆっくりと効果を獲得するのに適している方法で構築している。最初に詳細に要求仕様をまとめ、できる限り変更しないことを前提として開発するのがこれまでの手法である。しかし、最初の仕様が、ユーザー部門と完全に調整されることは実際にはありえないし、実際に出来上がったものをみれば、具体的な変更要望が起こるのは当然である。さらに、プロジェクトが長期になれば、その間に環境変化や戦略の変更も起こる。それに対応できなければ、経営者や利用部門からは何のための情報システムか、といわれるに違いない。契約上、費用を支払わなければならないのに、である。

これらは従来型の開発手法で開発する限り避けられない。言い換えると、先に支払っても効果があがらないことが十分想定されるのである。効果は早く、支払いはゆっくりとする変動費型モデルへチェンジしなければならないのである。

アジャイル開発は、仕様が最初に決まらず、変わりうることを前提とした開発手法であり。①プロセスやツールよりも、人と人同士との交流を、②包括的なドキュメントよりも、動作するソフトウェエアを、③契約上の交渉よりも、顧客との協調を、④計画に従うことよりも、変化に対応すること*1、を基本としている。

そして、必要なソフトを必要な時に必要なだけ作るというトヨタ生産方式の考え方を取り入れ、チームワークを重視し、ソフトウェアの管理単位を小ロット化している。機能の試作を早く行い、すぐにユーザーが確認し、修正する。この繰り返しがアジャイル開発の基本である。アジャイル開発はプログラムの書き方ではなく、システムの開発方法、開発プロセスを意味している。

アジャイル開発の直接的な効果は開発費の低減、期間短縮である。岐阜県での実績では、とりわけ品質の向上が図れたと報告されている。開発期間の短縮は利益を早く自社にもたらすことができるばかりでなく、環境変化によってシステムが不適応を起こすリスクを最小限にすることができる。

経営者からみたアジャイル開発手法の最大のメリットは、なによりも発注単位を小さくできることにある。全体の範囲を最初から決めるのではなく、進捗に応じて明確になった部分だけを発注できることで、一括丸ごとで発注、支払いではなく、プロジェクトを分割して、停止や休止、縮小、さらに再開への多様な選択肢を持てることである。リアルオプションアプローチを活用すれば、このようなオプションをもつことが、さまざまな環境変化による不確実性から生じる損失を軽減することが明らかになる。まさしく、経営者にとって最大の価値となる。

*12001年アジャイル開発宣言

2009年4月1日水曜日

ビジネスデザイン

昨年秋に、IBMのCIO会議に参加しました。
そのとき、IBMのCIOが「経営とITの融合」を実現する「ビジネスデザイン」が必要だと強調しました。我が意を得たりと心の中で叫んでいました。その時には、すでにデザインシンポジューム2008@慶応義塾大学(工学系学会の横断的な我国最初の研究発表会)に、迷った末に「ビジネスデザイン序説」というタイトルで申込み済みだったからです。
それから、しばらくたって、「ビジネスデザイン学科」あるいは「ビジネスデザイン研究科」を持っている大学を調べました。そして、幾つかの大学がすでに設置していることが分かりました。しかし、そのカリキュラムは従来の経営学の枠に拘ったものでした。私には「デザイン」という考え方のないものに思えました。
そして、最近のことですが、ビジネスデザインという言葉は使っていませんが、宮田秀明東大教授の「経営のテーマは限りなく設計のテーマに近い」という言葉に巡り会いました(理系の経営学、日経BP社、2003)。

私の考え方に近いことには喜びましたが、一方先達者がいたことに「がっかり」しました。気を取り直して、設備であれ、情報であれ、それらの投資の経済性評価を軸にビジネスデザインに挑戦しようと気持ちを新たにしているところです。

2009年3月29日日曜日

IT経営力大賞の基調講演から

http://www.gh9.com/cs/itouentai/outline.html
2009.02.25, 少し話しをしました。
以下そのストーリーです。資料は、次のサイトを参照ください。
・昨年来の金融危機で2つのことを学習した。第1に、現代の経済は信用に大きく依存しており、それが拡大すれば、需要が増大し、経済も拡大する。収縮すれば、需要が減退し、経済は縮小する。第2に、ネットワーク網の整備と業務のグローバル化によって、いとも簡単に、膨大な資金が国を越えて移動できる。
・この2つは社会システムとして人類が構築してきた武器ともいえるもので、そのパワーは原子爆弾にも比肩しうるほど強力である。人類はこの武器の危険さを昨年知った。次の時代は原子爆弾をコントロールするのと同じように、注意をもって管理することが大きな命題となっている。
・この世界大不況を超えた次に、それが5年後であれば、その風景は今と大きく異なる。世界が注目しているのは、BOPマーケット、すなわち世界の最貧困層に属する40億人をどのようにして経済の枠組みに加えるかである。単に、支援するのではなく、教育し、雇用の場を作り、給与を支払うことによって消費購買層として成長させうるかである。ケニアにコーヒー豆の会社を経営している日本人経営者がすでにいる。人を育てるという日本特有の強みをいかすべきではないか。
・オバマ大統領は就任演説で、石油を使うことはテロを助長するとさえいった、だから環境にやさしいエネルギー技術にとりくむと。これは国家戦略の転換なのだ。どんな時代になっても世界は日本を必要とするはずだ。石油価格が上昇し、油田を掘削するならば、掘削機械は、日本の技術を応用せざるを得ない。環境重視になったら、やはり日本の技術が不可欠なのだ。
・マイケル・ポーターは危機こそ、有能な経営者が改革に専念できる好機だと述べる。森精機の社長も、今、仕掛けておくことが、景気回復時期に大きな採算性の向上に結びつくという。まさしく、この時期にIT経営の真価が問われているのだ。本当に役に立つのかと。
・IT経営の駆動力はIT投資余力と経営者の改革意欲だ。好況期は投資余力はあっても、改革意欲はあまりない。今の不況期には改革しなければ生き残れない、これは経営者の常識だ。いかに少ない費用で改革を実現するかを考えるしかない。
・基本戦略は、従来の初期投資モデル、すなわち最初に大きく支払って、その後、ゆっくりと効果を上げ回収するモデルから、新たな変動費モデル、すなわち、早く効果を上げ、必要な費用だけ支払うモデルへと転換することである。そのための施策が、アジャイル開発であり、Saasの活用である。それによって、経営リスクを最小にできるIT経営の構築が可能になる。
 アジャイル開発は、日本的生産システムをソフトウェア開発に応用したものである。とりわけ、必要なソフトを必要な時に必要なだけ作るという精神である。重要なのは、企業、ITコーディネーター、そしてベンダーが、分業ではなく、一緒になってチームワ-クを構成することである。
 Saasは、従来の作ることを中心に情報システムを構築するのではなく、使うことを重視した情報システム構築への転換を意味する。
 CIOは、まさしく企業の全体構造を明示し、ブレのないように、必要な情報システムを構築するという使命をもっている。
 Saasの基本は業務代行である。EDIで受注した案件を、受注者に代わって回収代行してくれるならば、中小中堅企業にとって大きなメリットである。
・IT経営が役立つかどうかは、経営者の改革意欲による。しかし、改革意欲のある経営者を今こそ裏切らない覚悟をもって支援するのがまさにIT経営なのではないだろうか。

2009年3月28日土曜日

CIO百人委員会

3月25日、経済産業省のCIO事業の一環としてCIO百人委員会が開催されました。


しかしメンバーがすごかったですね。ただただ、ため息でした。
トヨタの渡辺社長が委員長でした。

2009年3月27日金曜日

3月度勉強会

2009年3月7日(土)開催

■ 開催日時・場所 IBCS 丸ビル 3月7日(土)15:00~17:00

■ 内容 
15:10~15:50;藤原 正樹氏(ITIM 関西事務局)
『博士論文の概説、関西におけるITIM 演習の取り組み報告』 
昨年来、IT投資マネジメントの共通教材が作れないかと取り組んできました。
とりわけ、JIPDECが作成した、ガイドライン、
http://www.jipdec.or.jp/chosa/it_management/
は、大変な労作ではあるのですが、内容が詳細にわたりすぎ、実施がなかなか困難であるとの声もありました。
具体的に、教材、ケースをつくることで、コンサルタント、ITコーディネーターの方に活用していただき、IT投資マネジメントを、具体的に企業に取り入れてもらえるようにしたいと願っていました。
今回、関西のITIM研究会にて、大変ご苦労され、それを実施してこられました。
藤原さんに、その報告をしていただきました。

16:05~16:35
松島 桂樹 先生 『PBL(Project Base Larnig)によるITIM 教育について』
ICTマネージメント人材育成PBL教材開発 テーマ;「ICT投資マネージメント」が実施されました。
この事業は、早稲田大学大学院、国際情報通信研究科、国際情報通信研究センター、小尾研究室が受託され、当ITIM研究会からも何人か方が参画されました。
その概要について報告しました。

2009年3月21日(土)開催

■ 開催日時・場所   3月21日(土)15:00~18:00   
武蔵大学 7号館 7102教室

■ 内容 
15:05~16:05;内閣調査室 藤参事官 様   
  『今後の世界経済とわが国の動きとITのかかわり(仮題)』 
今聞ける最悪、悲観的なシナリオを拝聴しました。中国は今年後半に失速、欧米はたちあがれない。
日本はなにも動かない。

16:10~17:10;玉川大学 小酒井 正和先生     
『出版記念講演 BSCによる戦略志向のITマネジメント』 
人的資本の整備、組織資本の整備が、重要な戦略の基盤となるとかたっていました。

17:25~17:55;武蔵大学 松島 桂樹先生     
『BOP市場におけるITIM』 
ネクスト40億人への市場開拓がポスト金融危機に不可欠。

2009年3月25日水曜日

はじめます。

戦略的IT投資マネジメント研究会(ITIMフォーラム)のblogを開始します。
                                  [ 経営情報学会研究部会]

研究会設立の背景
IT投資評価が大きな転換点にたっています。効果の数値化が困難であることは改めて言うまでもないことですが、それにとらわれすぎることによって、実質的にIT投資が躊躇されたり、総論賛成各論反対という土壌をブレークスルーできずに喪ってきたビジネス機会があまりにも多いように思います。
米国では、新たなIT、たとえばWeb、eビジネス、ポータルを前にして、改めて従来のROIやビジネスケース分析を超え、IT投資評価への新しい方法論が語られてきています。バランストスコアカード(BSC)、リアルオプションアプローチ(ROA)、ITポートフォリオマネジメントなどです。 効果の数値化の困難性に立ちすくむのではなく、そこにチャレンジすることで、様々な分析や知見が得られ、その先に、大きなビジネス機会が開拓できるように思います。
 

研究会の趣旨
本研究会は日本におけるIT投資マネジメント研究の促進と普及を通じて、効果的なIT投資の推進に貢献することを目的に、投資意思決定、事後評価およびIT資産の管理などIT投資に関する諸問題を共同研究により明らかにして行きたいと思います。 具体的な活動は主に以下の4点です。
①共同研究   メンバーの共有する研究テーマに関して実証的研究や文献研究などを共同で実施する
②輪読会   内外の文献を原則、通年で輪読する
③メーリングリストによる情報交換・共有リングリスト   前身のフォーラムの機能をこれまで通り活用する
④オフラインによる勉強会   メンバーの中から講師を選出するなどして、相互の研鑽を深める
参加メンバー(参加資格)
IT投資マネジメント関連分野の研究者(学界、企業ほか)と実務者。(経営情報学会研究会は経営情報学会会員であることが必要ですが、本研究会は前身であるフォーラムを解散せず本研究会と一体として維持継続しますので、非学会員の参加も歓迎します)
メーリングリストで運用しています。以下の趣旨とルールをご参照いただき、ご意見、および参加希望を
ITIMforum@ml.gssm.musashi.ac.jp.
平成14年4月1日
平成15年2月1日(修正)
平成15年2月27日(修正)
平成17年6月20日(修正)

1.目的:
日本におけるIT投資マネジメント研究の促進と普及を通じて、効果的なIT投資の推進に貢献する。.

2.参加メンバー
IT投資マネジメント関連分野の研究者(学界、企業ほか)と実務者

3.活動
原則として、メーリングリスト機能を活用したネットワーク環境での情報交換、情報共有
(当面、武蔵大学情報システムセンターのメーリングリスト機能を活用)
また、オフラインミーティングの随時開催.

4.運営ルール

上記参加資格の通り本研究会は入退会を個人の意思により自由としますが、メンバーの知的財産権保護の観点から、比較的クローズなメンバーシップ制をとります。すなわち、下記各点をルールとします。
①参加者名簿は内部で公開し、本研究会に関する情報交換、意見交換はメンバー間に限定する。
②本研究会の活動で得た知見を個人がノウハウとして活用することはかまいませんが、メーリングリストからのメールを研究会外部に転送することは禁止する。 
③研究会の成果物・著作物を再利用する場合は、作成者の許可を必要とします。