2009年4月8日水曜日

アーキテクチャ論批判

アーキテクチャは、zachmanのフレームワークにもとづく「エンタープライズアーキテクチャ」が創始とされる。また、As-Isモデル、To-BeモデルあるいはNextモデルなどもかつて熱く議論された。さらに、省庁もその普及を主導していた。ある企業は「情報システムの最適化」をするためのものと位置付けていた。システム論として考えれば、「最適化」とは、システムモデル、制約条件あるいは目的関数について明確な定義が不可欠であるが、明確になっていたとは言えないかった。今から考えると、当時のアーキテクチャの議論では、まだ「ビジネス」に関する視点が欠けていたのではなかろうか。
一方、藤本隆宏・武石徹・青島矢一編著『ビジネス・アーキテクチャ』有斐閣 2001が著名であるが、このビジネスアーキテクチャ論は、製品のアーキテクチャを議論しており、それが産業と生産プロセスにどのように影響するかが議論の中心であったため、企業のビジネスモデルを対象としているとは言い難い。ビジネスアーキテクチャには、プロダクトアーキテクチャ論を超えた検討が必要ではないか。そして情報システムの位置づけも必要なのではないだろうか。
いずれにしても、単独企業のみを対象にするのではなく、連結子会社あるいは提携会社と企業グループ、海外事業、海外生産、研究開発拠点などを反映したアーキテクチャの議論が必要なのはいうまでもない。
また、ビジネスアーキテクチャにリンクした情報システムの議論が不可欠である。情報システムアーキテクチャがビジネスアーキテクチャ、さらに組織アーキテクチャと連携しながら議論されなければならないだろう。情報システムをビジネスシステムの一部と考えるか、相補的な関係を重視するかは議論があるが、情報システム構築のためのシステムアーキテクチャ論に潰えてしまうのは、避けるべきであろうことはいうまでもない。

1 件のコメント:

  1. アーキテクチャーを議論するときいくつかの視点が踏まえるべきだと考えます。

    第1にアーキテクチャーは必要かどうかです。アーキテクチャーすなわち基盤構造、“基盤”ではなく基盤構造の必要性の有無です。基盤構造の必要性は2つに集約できるように思います。ひとつは、一貫性のある構造物をたてるための構造記述です。1階が木構造で2階がコンクリート構造では、構造物として機能するはずがないと思われます。それはどちらが構造的に強いかどうかではなくです。ふたつ目には利害関係者間での効果的なコミュニケーションを図るための表記物としてです。
    これらは、いづれも、不可欠だという合意はできているように思えます。

    第2に、ではアーキテクチャーにはどのようなコンテンツ、項目が含まれるかの議論です。これは目的と相補的な関係にあります。合目的的な内容が選ばれるのは当然です。藤本隆宏・武石徹・青島矢一編著『ビジネス・アーキテクチャ』では、まさしくすり合わせ型の製品アーキテクチャーがモジュール型アーキテクチャーと異なることによって産業、事業経営、とりわけ企業間連携と生産システムに大きな影響を与えることを立証するのがテーマであるのですから、当然、それにあった内容が選ばれています。
    zachmanの提起は、まさしくトーマスクーンがパラダイムと命名したような新たなイノベーションを創造し、その後に多くの追従者、いわゆるノーマルサイエンスのひろがりを作り出すことに成功しました。これによって発生した多くの議論は、並列的に議論するのではなく、さまざまなインタラクションのなかから進化を遂げてきたのだと考えれば、徐々に進化の成熟に近付いていると考えることができます。

    エンタープライズアーキテクチャーこそ、それらの進化を踏まえ、エンタープライズ活動に不可欠なコンテンツあるいはレイヤーとして、ビジネス、データ、アプリケーション、インフラという構造が提起され、多くのアーキテクチャー提言は、大同小異に収斂しつつあるように思います。

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