情報システムは大規模化し長期化している。初期投資は増加し、本番稼働しなければ効果は得られない。つまり、支払と利益取得のタイムラグはますます拡大する一方である。アジャイル開発では、効果が見える単位にプロジェクトを分割し小ロットで開発することを基本とする。そうすることによって、確実に支払と効果発生のタイムラグは短くなる。最初に仕様をすべて決めきるのではなく、環境の変化に機敏に対応できるよう、必要なソフトは必要な時に開発すればよいとし、ムダなソフト開発をできる限り排除することで、不要な発生を抑えることができる。価値に応じた負担と最小の経営リスクでの情報システム化を実現するための方策がアジャイル開発である。
これらは従来型の開発手法で開発する限り避けられない。言い換えると、先に支払っても効果があがらないことが十分想定されるのである。効果は早く、支払いはゆっくりとする変動費型モデルへチェンジしなければならないのである。
アジャイル開発は、仕様が最初に決まらず、変わりうることを前提とした開発手法であり。①プロセスやツールよりも、人と人同士との交流を、②包括的なドキュメントよりも、動作するソフトウェエアを、③契約上の交渉よりも、顧客との協調を、④計画に従うことよりも、変化に対応すること*1、を基本としている。
そして、必要なソフトを必要な時に必要なだけ作るというトヨタ生産方式の考え方を取り入れ、チームワークを重視し、ソフトウェアの管理単位を小ロット化している。機能の試作を早く行い、すぐにユーザーが確認し、修正する。この繰り返しがアジャイル開発の基本である。アジャイル開発はプログラムの書き方ではなく、システムの開発方法、開発プロセスを意味している。
アジャイル開発の直接的な効果は開発費の低減、期間短縮である。岐阜県での実績では、とりわけ品質の向上が図れたと報告されている。開発期間の短縮は利益を早く自社にもたらすことができるばかりでなく、環境変化によってシステムが不適応を起こすリスクを最小限にすることができる。
経営者からみたアジャイル開発手法の最大のメリットは、なによりも発注単位を小さくできることにある。全体の範囲を最初から決めるのではなく、進捗に応じて明確になった部分だけを発注できることで、一括丸ごとで発注、支払いではなく、プロジェクトを分割して、停止や休止、縮小、さらに再開への多様な選択肢を持てることである。リアルオプションアプローチを活用すれば、このようなオプションをもつことが、さまざまな環境変化による不確実性から生じる損失を軽減することが明らかになる。まさしく、経営者にとって最大の価値となる。
*12001年アジャイル開発宣言
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